高尿酸血症(痛風)
高尿酸血症(痛風)
皆さん痛風という病気を1度は聞かれたことがあると思います。痛風になると、一般的には足の親指の付け根が腫れ、<風に当たるだけでも痛くてたまらない>という症状になることが多いです。世界の偉人たちも、実はこの病気を患っていたと報告があります。例えば、マケドニアのアレクサンダー大王、フランスのルイ14世、画家のレオナルド・ダ・ビンチなどが、痛風であったのではないかと言われています。ただし、日本では明治時代になるまで病気になった人がいなかったという説が有力ですが、現在では非常に多くの方が痛風やその原因となる高尿酸血症といわれています。
さて、この痛風の原因ですが、血液中の尿酸という値が高くなる(高尿酸血症)と、起こりやすくなると言われています。それでは、尿酸とは一体どのような物質なのでしょうか?
尿酸自体の作用として、抗酸化作用があります。抗酸化は老化を防ぐ作用ですので、適正量の尿酸は、長寿につながります。具体的な話をすると少し難しい話になるのですが、細胞の寿命等で不要になった遺伝情報に関係する物質(DNAやRNA)、エネルギーを担当するATPなどが分解されていき、まず「プリン体」という物質ができます。このプリン体がさらに肝臓で分解され尿酸となります。プリン体は、一度はテレビや広告等で尿酸値を高くするあまりよくない物質として聞かれることが多いですが細胞の代謝や構築には不可欠なものです。また、意外かもしれませんが、プリン体を食事でとる量は、体の細胞で分解されてできる量の半分以下です。しかしプリン体の多い食物をやはり過剰摂取をすると血液中の尿酸値は上昇します。プリン体の多い食物としては、ビール(酵母)は有名ですが、他にレバー、白子、干物、アンコウなどがあります。特にレバーは、先述したように肝臓がプリン体を代謝する部位ですので当然かもしれません。また、最近では、果糖(フルクトース)の最終代謝形態が尿酸であるため、果糖の取りすぎは、尿酸値を高くするともいわれています。他には、睡眠不足やストレスも尿酸値に悪影響するといわれています。最後に、実はこれが一番影響するのですが、脱水になると尿酸値は上昇します。
それでは血液中の尿酸値が高くなるとどうなるのでしょうか?具体的には痛風結節や発作以外に以下の病気を引き起こすとされています。
これらの予防のため、尿酸値をきちんとマネージメントする必要があるのです。
次に高尿酸血症の診断と治療について、お話したいと思います。
高尿酸血症は、血液検査で尿酸値が7mg/dLを超えた状態のことを言います。高尿酸血症のガイドラインでは、なんと成人男性の30%は高尿酸血症ともいわれています。
先述しましたように明治時代には、報告がなかったのですから、まさに<現代病>といえると思います。当然高尿酸血症は、治療する必要があるのですが、治療に関しては、日本と欧米では若干異なります。(欧米のガイドラインでは症状のない高尿酸血症の投薬基準がありません)まず、日本における薬物治療についてお話ししたいと思います。
一般的には、以下のような治療法が行われます。
抗炎症剤で治療をします
後で述べますが血中尿酸値を下げるお薬(以後、尿酸降下薬と書きます)で治療します
皆さん、痛風発作の時こそ、尿酸降下薬を飲んだほうが良いのではと考える方も多いのではと思います。しかし、血液中の尿酸値が変動すると発作が遷延することが知られており、尿酸降下薬を飲むことで血液中の尿酸が下がるため、逆効果になります。そのため、痛風発作をまず抗炎症剤で落ち着けたのちに、尿酸降下薬を開始します。尿酸降下剤には、大きく分けて尿酸を尿に捨てる排泄促進剤と尿酸自体の生成を抑制する尿酸生成抑制薬の2種類があります。
尿酸排泄促進薬の長所は、尿酸の排泄が低下している場合によく効きます。欠点としては、尿をアルカリにしないと結石ができてしまうので、尿をアルカリ化させるお薬が必要となります。当然もともと尿路結石がある方には使えません。尿酸生成抑制薬の長所は、尿酸再生過剰の場合に効果があり、実際の診察現場では、排泄促進薬よりこちらのお薬で治療することが多く、フェブキソスタットのように腎機能が関係なく使用できる薬もあります。いずれの薬物治療を行った際でも血液中の尿酸値を6.0mg/dL以下に維持することを目標とします。
それでは、お薬以外に、日常生活でどうすれば尿酸値を上げにくくすることができるのかを述べたいと思います。
箇条書きにすると以下のものが有効です。
以上尿酸についてお話ししました。当院では、上記の点を踏まえて尿酸値や痛風の治療を行っております。検診等で尿酸値を指摘された方、痛風の既往がある方等、一度当院にご相談してみてください。
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