高コレステロール血症(脂質異常症)
高コレステロール血症(脂質異常症)
高コレステロール血症(脂質異常症)は、日本人の約4人に1人が、罹病もしくはその疑いがあるといわれています。そのため、健康診断をうけて、血液中のコレステロールが高いといわれたという方もいらっしゃるかと思われます。加えて、悪玉コレステロールが高いと、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞といった動脈硬化疾患を引き起こすということをお聞きになられた方も多いのではないでしょうか?そのため、<<コレステロール=悪いもの>>という風にお考えの方も多いかと思います。しかし・・・実はコレステロールは生きていくうえで不可欠なものなのです。
それでは、コレステロールとは、いったいどんな役割をしているのでしょうか?簡単に言うと、コレステロールの働きは以下のような働きがあります。
1つ目の細胞膜に関してお話します。
ヒトの細胞は60兆個あり、それらが、組み合わさってできています。生物の教科書で見たことがある方が多いと思われますが、細胞は、細胞膜につつまれる(図1)ことで形態を維持しています。
その細胞膜を作るのにコレステロールは非常に重要な役割を果たしています。
というのも、細胞膜成分の約25%はコレステロールからできており、コレステロールの存在により細胞膜を安定化させる作用をもっています。(図2)
つまりコレステロールがないと細胞膜が作れなくなったり、もろくなったりと細胞の形態維持が難しくなります。
特に人の体において、細胞膜が大切とされているのが、赤血球で、赤血球が壊れてしまい、貧血の原因となることはもちろん、赤血球中のビリルビンという物質が飛び出てしまい、黄疸を起こすことになります。
ただし、ここまでひどくなることは、ごくごくまれです。2点目のステロイドを作るということに関しては、非常に肝要です。
なぜなら、ステロイドには、糖代謝、脂質代謝、蛋白代謝、水・電解質代謝、骨・カルシウム代謝、免疫抑制作用、抗炎症作用など多岐にわたる作用があります。
そのためステロイドがないと生きていけないため、コレステロールは、不可欠な物質なのです。
それでは、コレステロールは、どの程度必要なのでしょうか?
LDL(悪玉)コレステロールで30mg/dl以上等、諸説あり、現時点で確定したものはありません。
ただしヒトは他の動物より大人になるとかなり高値であるため、よほどのことが無い限り問題ないとされています。
また、なぜヒトのコレステロールは他の動物より高いのかは、子育ての際に他の動物である牛のお乳を飲むから等、諸説ありますが、こちらも確実にはまだわかっておりません。
ここまでお話したように、実はコレステロールは大切なものなのです。
しかし、食事の欧米化等、動物性の油脂摂取が多くなり、高コレステロール状態となり、逆に動脈硬化を引き起こしてしまうことが問題になってきています。
ここで、今回の高コレステロールについてお話していきたいと思います。
現在の脂質異常基準は、以下の通りです。
高LDLコレステロール血症
(120-139㎎/dL:境界域高LDLコレステロール血症)
低HDLコレステロール血症
高トリグリセライド血症
高Non-HDLコレステロール血症
(150-169㎎/dL:境界域高LDLコレステロール血症)
この基準ですが、LDL(悪玉)コレステロールが高い、もしくはHDL(善玉)コレステロールが低い、あるいは中性脂肪が多いと、脂質異常症と診断することになっています。
特に重要なのが1)の高LDLコレステロール状態で、この状態が持続すると、動脈硬化(特に脳や心血管)を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞を起こす危険性を高めます。
逆に一度でも動脈硬化性の病気をしたり、危険性の高い方は、以下のように目標値が厳しく設定されています。
糖尿病 | 120mg/dl未満 |
---|---|
糖尿病に加えて非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、慢性腎臓病、メタボリックシンドローム、喫煙)を合併した場合 | 70mg/dl未満 |
急性心筋梗塞、不安定狭心症(急性冠症候群) | |
家族性高コレステロール血症 のどれか | |
冠動脈疾患(狭心症、無症候性心筋虚血) | 100mg/dl未満 |
では、どうすれば、脂質異常症と診断された場合、予防はどうすればよいのか、具体的にのべると以下のようになります。
いずれも、当たり前のようなものですが、実際にするとなれば、かなり難しいです。
アルコールは、関係ないかもと思われるかもしれないですが、私を含めてですが、アルコールだけ飲むという方は少ないと思います。というのも必ずおつまみを召し上がると思います。
ビールやハイボールには唐揚げという風に油ものや塩分の摂取が増えるという要素もあります。当然塩分摂取すると血圧が高くなり、高血圧+脂質異常はさらなる動脈硬化リスクとなります。
以前私が行った研究でも、お酒をたくさん飲む糖尿病(ダイアベテス)の方は、高血圧の合併が多くなっていると糖尿病学会で発表しています。
運動に関してですが、週3回以上で30分以上が理想とされていますが、基本的な考えとしては1分1秒でもすることが有効で、できる範囲で継続することが何より大切と考えます。
たとえば、なるべく座ったままの生活をさけ、こまめに動くといったものでもよいと思います。
これらの予防をしても効果が無い場合、薬物治療を選択します。
色々とお話しましたが、動脈硬化性疾患(脳卒中や心筋梗塞等)を一度引き起こすとその後、ADLが低下したり心不全を引き起こしやすくなったりと、健康寿命の維持が難しくなることもあります。
つまり、脂質異常症の治療は、自分への先行投資と考えていただけるとわかりやすいかと思います。
もし、健康診断で指摘されたり、以前から気になっているという方は、一度当院へご相談下さい。
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