循環器疾患の病気で一番患者様が多く有名なものが高血圧症です。高血圧症の患者様は、全国で4000万人以上いると言われ、実際に治療を受けておられるのは、約半数しかいません。血液を全身に送るためには、適度の血圧が必要ですので、それが高すぎる状態が高血圧です。
日本高血圧学会では上の血圧である収縮期血圧（心臓が収縮したときの血圧）が140mmHg以上、または下の血圧である拡張期血圧（拡張したときの血圧）が90mmHg以上を高血圧としています。そのまま高血圧の状態にしておくと脳や心臓の血管が動脈硬化を起こし、脳卒中や心臓病、腎臓病などの重大な病気を発症する危険性が高まります。日本人では、高血圧の約8～9割が本態性高血圧（原因をひとつに定めることのできない高血圧）で、遺伝的素因（体質）や食塩の過剰摂取、肥満など様々な要因が組み合わさって発症します。中年以降にみられ、食生活を中心とした生活習慣の改善が予防・治療に非常に大切です。当院では、循環器専門医が診察するため、降圧治療の症例を数多く経験していますので、血圧の下がりが悪い方も一度ご相談ください。

脂質異常症とは血液中の「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールや中性脂肪（トリグリセライド）が増えたり、「善玉」のHDLコレステロールが減ったりした状態のことをいいます。この状態を放置していると動脈硬化が起こり、ゆっくり進行し、脳梗塞や心筋梗塞といった動脈硬化性疾患を引き起こす可能性が高くなります。脂質異常症の発症には、過食、運動不足、肥満、喫煙、過度な飲酒、ストレスなどが関係しているといわれています。「内臓脂肪型肥満」ではLDLコレステロールや中性脂肪が多くなり、HDLコレステロールが少なくなりやすい傾向があります。また、遺伝性の「家族性高コレステロール血症」と呼ばれているものもあり、その場合より厳格な治療が必要となることもあります。（生活習慣病のページにも脂質異常症のことを触れておりますのでご覧ください）。

狭心症とは、一過性に心臓の血液が足らなくなるため酸素不足をきたし、胸が苦しくなる病気です。心臓を栄養し、心臓の外側を走行している冠動脈が、動脈硬化などによって狭くなると、心筋（心臓壁を構成する筋肉）に送られる血液量が不足し、心筋が酸素不足となります。このときの痛みが狭心症の痛みの原因となります。労作性狭心症は「階段を上ると胸が締めつけられるように痛く（重く）なる」、「重いものを持ち上げたり、坂道を歩いたりすると胸が苦しく痛むけど、安静にすると数分で楽になる」という症状がみられます。痛みの特徴としては、ちくちく痛いというよりも、胸が圧迫される感じや絞扼（こうやく）感などがあり、前胸部のみならず、みぞおち、肩、頸などに放散することもあります。まれなケースでは、歯やのど、胃が痛むこともあります。痛みは多くの場合、数分までのことが多いです。当院で心電図やエコー検査、24時間心電図検査を行ったり、状況によっては、カテーテル検査ができる病院に紹介することもあります。

安静時狭心症は、別名冠攣縮性狭心症とも呼ばれます。多くの場合、冠動脈が一過性に痙攣（けいれん）を起こして収縮し、血流が一時的に途絶えるために生じると考えられています。この病気は、日本人に多く、日本のグループが最初に世界に発表しています。一般的な症状として、夜、就眠中、明け方に胸が苦しく押さえつけられたような発作が起こります。痛みの性質や部位などは、心臓の冠動脈が細くなることは共通しているため、労作性狭心症と同様です。冠動脈の攣縮（痙攣性の収縮）も、動脈硬化の進行過程にみられる現象と考えられていますが、突然死の原因となることもあると考えられています。このような症状がある場合、早めに検査を受け、適切な治療を受けることが非常に大切です。

心筋梗塞とは、動脈硬化が進行して冠動脈にできていたプラーク（血液中のコレステロールや脂肪からできた粥状の物質；英語では歯垢という意味です）が破綻して冠動脈を詰まらせてしまい、心筋に血液が完全に行かなくなり、心筋が壊死した状態をいいます。突然、胸が焼けるように重苦しくなり、締め付けられ押しつぶされるような症状が現れその症状が持続します。冷や汗が出たり、吐き気があったりすることもあります。この発作は長く続き数時間に及ぶこともあります。このような場合は、必ず急いで救急車を呼んでください。一般的には冠動脈内に詰まった血栓を、血栓溶解薬で溶かす治療法、バルーンが先端についたカテーテル（細い管）を血管内に挿入し、詰まった部分を拡げたり、再閉塞を防ぐためにステント（筒状の金網）を血管内に留置したりするインターベンション治療が行われることが多く、入院治療が必要となります。